ああ懐かしい 表銀座

2019/11/26

今朝のグレートトラバースは、北アルプスのコースを歩む陽希さんの姿を映していた。燕岳、大天井岳、そして槍ヶ岳に至る。このコースは尾根道で眺望がよく、「表銀座縦走コース」として登山客にとっては魅力あるルートである。今をさかのぼること40数年前、私はここに立っていた。たしか大糸線だったかで中房温泉に宿し、急な上り坂を上がって稜線に出た記憶がある。燕山荘で二晩世話になった。雨のためで、確かテレビの夏の甲子園大会をやっていた。翌朝は快晴。気持ちも自然と高まったと記憶している。快調に足を運んだ。なんたってここは、あこがれの北アルプスだから、そうなるのは当然。大天井岳のヒュッテにも世話になった対岸には槍ヶ岳が俺を呼んでいた。良く来たなぁ、早く来いと。写真と映像でしか見たことがなかった槍。タバコの煙を揺らしながら幾度も感慨深く眺めたと記憶している。やっと念願の槍に登れるんだと思うと、思いも自然と高ぶる。一気に槍の向かって高さを稼いだ。今夜の泊はは殺生ヒュッテ。山岳地域には珍しく風呂画備わっていた。汗だくだくになったわが身を、さっぱりさせるには実に有難い。喜んでいたのはここまで。湯が非情極まるほど汚れていたのだ。髪の毛がうようよ漂っているではないか。気持悪い、ざわざわしたよ。今持って忘れられない思い出だ。この小屋は山岳小説家・新田次郎氏の著書でも度々紹介されている山岳ガイドの、牧の喜作氏が建てた由緒ある小屋だ。期待外れの経験をさせてもらったよ。そして翌朝早く槍に向かって歩きだした。我が両足はまるで引き付けられるように確実にしっかりと孤高の頂に向かっていくではないか。当然のこと。念願の山だもんね。眼前に迫る姿は実に凛々しいではないか。小槍も同様。頂にはすでに何人かの登山者の姿が見える。そこには気持ちが高揚する自分を重ね合わせる自分があった。梯子段を上り、ついに槍ヶ岳の頂に立つことができた。正直嬉しかった。仙台に残る妻を思い出した、機会があれば一緒に、、、と。

次は南岳。稜線が続くが我が足は快調。晴れ晴れとした気持ちだ。私もいっぱしの槍を制した登山者の一人だからね。そしてキレットに挑む。ここは急激な深い谷で、一気に高度を下げるルートだ。足を踏み外したら一気に奈落の底に落ちていく大変危険なルートである。雨で濡れていたらと思うと身震いしてくる程の注意を要するところ。底に降りたら今度は逆に北穂高岳に向かっての一気の登りになる。北穂山荘は、お洒落なイメージがある。眼前に広がる景観を肴にデッキでみんなでコーヒーを飲んでいた。実に良いロケーションを持った印象が残っている。さぁ、次は奥穂高だと意気込んで布団に入った。が、翌朝は雨、雨で予定を変更。槍を制した後だし、日程の余裕のことを考え、上高地に降りることを選択。涸沢カールを経てもくもくと歩いた。上高地はこれまたオシャレな地域に感じた。さすが洗練された山岳観光地だ。私の家の中の一角に、上高地で買った木彫りの雷鳥が飾ってある。たまにはその雷鳥の姿を眺めながら青春時代の思い出に浸る。至福の一瞬でもある。今朝、テレビを見ながら40数年前の自分を思い出した。ああ、俺にもこんな時代があったのだと。

(写真は今年の夏のものです)

【食材持ち込み炉端焼き専門店】

【セルフ炉ばたや いずみ・店主のつぶやき】