暮れの喜多方路を歩く

2021/01/05

暮れも押し迫った12月28・29日の両日、妻と二人で会津の喜多方の街を見て回った。天気予報では数日後に寒波が押し寄せるという予報の前に、あえてである。おりから「GO TO トラベル」キャンペーンが中止されて、気持ちが萎えていたのを、逆に払いのける思いが私達をそうさせたからだ。雪道に備えて、チェーンとスコップを持参した。自宅仙台から山形に向けて関山を越える。道路わきの雪の量は例年より少なく、走るのに何の支障もなかった。むしろ、これから向かう米沢・喜多方の大峠道の方が心配だった。なんたって豪雪地帯である。除雪が行き届いてくれたらと願うばかりだった。おかげさまで道路の雪は除雪されていて最初の目的の「喜多方ラーメン」を口にすることが出来て、先ずはホッとした。独特のちぢれ麺が何ともいえない。ちょっと「しょっぱかった」けどね。病みつきになる味を堪能して、早めに今夜の宿に向かう。次の楽しみの温泉が待っているからだ。冷え切った体に温泉の温かさはこの時期最高。宿に着いたら、何が何でも真っ先に温泉に身をゆだねる。ここで一息。あ~あ、至福のひと時を十分に堪能する。手足を大きく伸ばすこの瞬間が堪らないのは、誰しもが感じるのではないか。リッチな気分に浸り、ゆっくりと一夜を過ごし、朝食のバイキングを摂る。これまでと違うのは、館内ではマスク着用。食堂ではポリ製の手袋着用とあった。トングをみんなで掴むからだろう。又、席もゆったりとした間隔をとってあった。人出はいつもと、そう変わりはなく若い客が多い。たぶんスキー客なんだろう、年末年始を利用して来たのに違いない。料理はバイキングだから、自分好みをトレイに載せる。偏ってしまうのが、ちょっと心配。まぁこんなことも許してもらおう、たまにしか出来ないのだからね。最初の日は和食中心にトレイに料理を載せる。いつもは焼き魚として「シシャモ」なんだが、今朝の焼き魚は「めひかり」だった。専門に焼いてくれる従業員がいて、その焼き加減に満足。いい具合に脂がのっている。味の良さに惹かれて3回もお替りをしてしまったではないか。いい一日の始まりだ。最初良ければすべて良しと自分ひとりで思っている。ナビを喜多方駅にセット。脇にある観光案内所で観光地図をいただくからだが残念、年末休館。困ってしまったが入り口わきにその案内図が置かれてあった。思わずホッとする。いつも立ち寄る駅そばの物産館で、もち米をいただく。正月の必需品だからね。ことしの正月のお餅は、会津喜多方産だ。じっくり会津の餅を味わうこととする。今から楽しみだ。そこには、きっと会津の味の良さに惚れ込むことを期待している自分があった。

車の駐車場は市役所向かいの川端にあるところを選択、一日300円なのだが、年末休暇なのだろう、係員が不在。おかげ様で料金未払いよ。失礼。喜多方は「蔵とラーメン」の街。蔵を活かした活用がなされている。土産店、喫茶店、美術館、他にもあるだろう。先ずは、美術館。街中を走っていた時、竹下夢二の作品を展示しているという看板を目にしたからだ。大正時代の女性の姿、顔を独特の表現で表していて、逃して通れない。旅館を併用しているところで、女将は年末で暖房もしていないから見せられないといったが、暖房がなされていなくても結構だから、何とか、、、という願いが叶った。掛塾、骨とう品など魅力的な品々が展示され、一角に「夢二」の黒猫を抱くあの作品を拝見。惚れ惚れするではないか。多分模倣品なんだろうが、それでも満足した。本物だったら、とても全国あちこちにあるわけがないからだ。足から感じる冷たさは我慢できても、館内の照明が暗い。もう少し見やすく明るく出来ないかと女将にいったが、作品の劣化を防ぐために、あえて劣化防止用の照明にしていると言われて、何も反論が出来なかったよ。年老いた身には正直この程度の明るさには耐えられない。

観光案内図をたよりに、由緒ある見どころを見て回る。これがまた楽しいのだ。地場産品を見て楽しむ。古くから地域の住民たちが使ってきた生活用具などは、見事に使いこまれていて、その住民たちの思いが滲み出ているではないか。蔵巡りに疲れを感じ、ふッと時計に目をやると、針は1時をすぎを指していた。この地で真っ先に思いつくのはラーメン。喜多方ラーメンだった。一度は味わってみたいと常々思っていた某ラーメン店に自然に足が向かっていた。期待違わず店には大勢の客で賑わっていて、迷わずチャーシューたっぷりの肉そばを注文。浮き浮きした気持ちでいられたのはここまでだった。スープは冷めかけ、麺は茹ですぎの感があったではないか。何のことはない。厨房では一度に数多くの丼を並べて、一気にスープ、麺を丼に注ぎ込んでいた、いわゆる大量生産だった。殊更、この店の味を期待するには無理があったのだ。店主が客の注文に応じて、心を込めて造ってくれる他の店を探すしかない。その点、ここ喜多方には店の数に不足はないからだ。

案内図を見ながらの街歩きはまだまだ続く。道は狭かったり、ちょっとまっすぐではなかったり、飽きが来ないのだ。たぶん空襲に遭わなかったのだろう。それだけ旧さが残っていて、それが私にとって魅力であった。会津若松と比べて歴史的な遺跡が少ないが、それはそれでいい。漆、柿渋を使った地場産業がまだ残っている。街中を好き勝手に歩いていて、それに突然遭遇した時の思いは、理解出来ないだろう。道に迷えば教えてくれる地域の人の存在もある。旅人を親切に「もてなす」気持ちは失っていただきたくない。そうなってしまったら、自然に足が遠くなってしまうだろう。

夕食の食材をベニマルで調達。安くて簡単な食品がいい。だいいちホテルのディナーなんて高価で、私たちの口に合うはずがない。野山を駆け回るアウトドア派の私たちに、一食一万円を超える夕食なんて食べたいと思う気持ちが湧いてこないからだ。豪華な設備と温泉があれば充分。朝食には満足だ。デザートにソフトクリームまで用意されている。鉛色の冬空の中、まずまずの喜多方の街中を見終え、ホテルに戻る。妻と缶ビールと、「ほろよい」で乾杯。次は会津若松だ。感染しないよう、密集を避けながら、私たちの旅は続く。(写真はGO TOの際、利用したログハウス)

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